沖縄の神秘 ノロとユタの違いとそれぞれの役割

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ノロとは

ノロとは、琉球王国時代に任命された祈りを捧げる人で、管轄の御嶽や拝所で国や民の為に祭祀を執り行うのが役目の国家公務員という立場でした。

琉球王国時代のノロのことを神人(カミンチュ)と呼んでいました。

琉球王国時代は霊力がある人をノロに任命していましたが、世襲制で跡を継いでいたので、神と話す力を持たないカミンチュもいたそうです。現在の神社の神主も霊力があるとは限らないのと同じです。

沖縄には「琉球神道(りゅうきゅうしんとう)」と呼ばれる特徴的な信仰があります。

琉球神道は、「御嶽神道(うたきしんとう)」や「ニライカナイ神道」とも呼ばれ、創造神である「アマミキヨ」(或いは「アマミク」)を始めとして、様々な物に神が宿るとする精霊信仰の様な形の自然宗教とのことです。

琉球神道において、万物には「セジ」と呼ばれる霊力が宿り、人間を善い方向に導くとされています。この「セジ」を用いて様々な儀式を執り行う巫女役の女性を「ノロ」と呼び、古くから沖縄の女神官として人々に親しまれてきました。

ノロの起源

沖縄の歴史では、1429年に尚巴志王(しょう はしおう)によって琉球王国が成立し、以後1879年までの450年間 続いていきます。

この琉球王国が成立する前の沖縄では、小規模の集団によって各地に集落が作られ、独立した集落ごとにまとまって生活が営まれていました。

集落が造られる際、必ず最初に「御嶽(うたき)」と呼ばれる祭祀場を選定します。「御嶽」は琉球における聖域の総称であり、現在でもパワースポットとして多くの御嶽が残されています。

この御嶽には集落ごとに様々な神が祀られているのが特徴で、それぞれの御嶽を守るノロがいたのです。

御嶽は、大まかに分けて4つに分類されます。

・ニライカナイからの来訪神
・血縁関係のある祖先を神として祀ったもの(祖霊)
・血縁関係はないが、何らかのつながりを持つ祖霊(琉球神道における人間の祖先など)
・偉大な人物を神として祀ったもの

これらの神々は御嶽に祀られ、そこでは神様に祈りをささげて、作物の豊作を願う祭祀が行われていました。

この祭祀を執り行ったのが根神(ニーガミ)と呼ばれる巫女たちで、琉球王国が成立するに当たり、王族に仕える神官としての地位を与えられ、それらをまとめるリーダー役の神女がノロと呼ばれるようになったとされています。

ノロの役割

ノロは巫女であり、その最大の役割は沖縄諸島の繁栄を祈願する事に有ります。今でも季節の節目や月齢などの要素に応じて、ノロによる様々な儀礼祭祀が行われています。

イザイホー

琉球王国時代において、最高の聖域と位置づけられた久高島で行われる儀式です。
12年ごとの午年に旧暦の11月15日から4日間行われるもので、ニライカナイ(琉球神道における極楽浄土)より訪れる神を迎えてもてなし、新しいノロをその神々に認めてもらう為の儀式です。
600年以上の歴史を持つ、沖縄でもっとも重要な儀式の一つです。

イザイホーは、1978年を最後に現在に至るまで行われておらず、その存続が危ぶまれています。

ショーグヮティ

ショーグヮティは旧歴の1月1日と1月3日に行われる物で、いわゆるお正月の事です。大漁祈願や一年の健康などを祈る儀式がノロによって行われます。祭祀の中ではカチャーシーと呼ばれる魔を払う踊りが踊られ、一年の幸福を祈願するのが特徴です。

ハティグヮティマティー

「八月の祀り」の意味であり、一年のうちで注意を要する月といわれる8月の、10日~12日の3日間行われます。1日ごとに違った儀式が行われ、初日はビンヌスーの舞(祈り)から始まり、健康・平安の祈願をするのが特徴です。2日目の「ヨーカビー」は「悪霊」を祓う日とされており、3日目の「テーラーガーミー」は太陽神の儀式が行われます。

ジューグヤー

十五夜の事で、久高島にあるフカマ(外間殿)を中心に行われ、ハティグヮティマティーの結びの祭祀で、月神に対する祈りが行われます。祈りが済むと参加者全員で唄い、踊り、最後はカチャーシーが舞われる、賑やかなお祭りです。

ユタとは

ユタは、生まれ持って霊力があり先祖や亡くなった方と話し、個人の相談にのります。そして個人の拝み事にも同行したりと個人の為に動いています。

ユタは血筋での継承ではなく、生まれ持っての能力で、ユタの家系には霊能力を持つ人が生まれることも多いようです。

ユタとは、沖縄独特の占術師で、先祖からのメッセージを受け取ったり、土地の吉兆を見たりするときに地元の人に頼られる存在です。

何回か沖縄に行ったとき、私はユタに会ってみたいと思うようになりました。

しかしネットで検索して出てくるのは、占い師として高い料金をとっているユタだけで、沖縄の本当のユタは見つけられません。

また最近では男性のノロやユタも多く存在します。琉球時代の沖縄の祭祀は女性にだけ許されていたので、男性のノロもユタはいなかったのです。

本当のユタは判断をお願いしても、高い料金をもらうと力が弱くなると言い、高い料金は受け取らないといいます。そして沖縄独特の風習なので、本土の人のことは見ないともいいます。

沖縄旅行の時、現地の人に「本当のユタに会ってみたいのだけど知り合いにいませんか?」と聞いてみました。

しかし誰に聞いても、「昔はいたけど今はいない。」という答えしか返ってきません。

近年の沖縄では、石を投げるとユタにあたると言われるのに、なぜか現地の人はみんなが「いない」と答えるのです。

ほとんどのユタと名乗っている人は、ユタだと言って占いをしている人で、占い師として商売です。

霊能力者としてのユタは何も言わずとも語りますが、占い師のユタは自分の質問に答えさせることにより答えを導くのです。

本当のユタは沖縄では判断でその家の明暗を分けてしまう存在なので、当たるか当たらないかの占いレベルではありません。

それだけ地域に溶け込んでいるユタを観光客に教えることはないのです。

ノロとユタの違い

沖縄の宗教における巫女として、ノロとユタはどちらも沖縄の人々の信仰に根ざした存在ですが、次のような違いが有ります。

ノロが祈祷や儀式などの大掛かりな神事を行うのに対し、ユタはお墓参りやお祭り、冠婚葬祭など人々の生活に密着した儀式を行います。

ノロは特定の血統に属するものしかなれないのに対して、ユタは血統に限らず修行を重ねることでなれるといわれます。

ノロは主に自然の精霊と対話を行い、ユタは主に祖霊などの人の霊と対話を行います。

ノロは神主や神官といった立場の存在であり、ユタは霊能力者や占い師の様な職業であると言えます。

沖縄の人々にとって、様々な信託などを司る神聖な存在がノロであり、より身近で日常的な存在がユタであると言っても良いでしょう。

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