沖縄の人はヒヌカンを祀る
ヒヌカンとは、かまどの火の神様のことです。沖縄では古来よりこのヒヌカンを祀り、拝むという行為が代々受け継がれてきました。
なぜ、沖縄の人は火を神として祀るようになったのでしょうか。諸説ありますが、文明の礎としての火、つまり生命にとって重要な「食」や「住」を支える火を祀り・拝む民間信仰だと考えるのが一般的です。
沖縄では最初にヒヌカンを拝む
沖縄諸島に仏壇が登場したのは17世紀のことで、それ以前の家庭を守る神はヒヌカンだけだったそうです。
現在でも家庭における重要なできごとは最初にヒヌカン、つぎに仏壇を拝む順序になっています。またヒヌカンを祀るのは女性で、仏壇や神棚を祀るのは男性とされます。
ヒヌカンの神具
ヒヌカンは、台所の火を使う場所近くに祀り、ヒヌカン神具の色はすべて白で統一します。(白は神様の衣装から起因しており、それに対して祖先を祀る仏具は着物などのように色・柄が入っていいとされています)
具体的には、以下の神具を配置します。
- ウコーロー(御香炉)
- 花瓶(花は飾らずチャーギ、クロトン、榊など)
- 湯呑(水は毎日かえます)
- たかつき(塩を盛ります)
- 盃(旧暦1日、15日に泡盛を入れます)
- ウブク茶碗(三器、旧暦1日、15日にご飯を盛ってお供えします)
ヒヌカンセット
沖縄では、ヒヌカンの神具セット1式はホームセンターなどで簡単に手に入れることができます。
日本本土では、神具はホームセンターにも売っていますが、ヒヌカンセット1式を揃えることは出来ませんでした。
神具を扱うインターネットショップで同じようなものを探すしかできませんので、ヒヌカンを仕立てたい方は、沖縄に行かれたときにでも購入された方がサイズも選べるので良いと思います。
沖縄独自の平御香(ヒラウコー)
またヒヌカンには、沖縄独自の線香である平御香(ヒラウコー)が必要です。
ヒラウコーは、その文字通り平べったい板状をしており、黒色なので地域によっては、クルウコーとも呼ばれています。また、「葉御香」「島御香」と呼ばれることもありますが、すべて同じです。
ヒラウコーは、一般的な線香とは違い、火をつけても香りはありません。原料がタブノキの皮・木炭・芋の粕の3つなので、香りを出すことを目的として作られていません。
一般的な大きさは、長さ15センチ、幅1.5センチほどで、1枚をチュヒラ、2枚をタヒラと呼び、拝む目的や場所によって縦の筋に沿って割り、最大6本に分けて使います。
ただし、ヒラウコーを割る・割らないには決まりがあり、目的によっても使う本数が違います。
ヒヌカンの役割
ヒヌカンは女性が守り毎日お祈りします。ヒヌカンに家族の健康や安全祈願、厄払いのお願いや吉事の報告を行なうのです。
家族にとって嬉しいことがあったとき、お祝いごとがあったときなど、ヒヌカンの前で報告します。逆に悲しいことがあったときや苦しいときにも、ヒヌカンに苦しい胸のうちを明かし、救いや加護を願うのです。
さらにヒヌカンの役割には、「お通し」と呼ばれる祈願があります。お墓や仏壇が遠く離れてる場合でもヒヌカンを通して拝むこともできるのです。
ヒヌカンは天の神に報告をしてくれる
1年の最後(旧暦12月24日)は、御願解き(ウガンブトゥチ)といって、ヒヌカンが昇天して、1年間の家庭での出来事やお願い事を天の神に報告する日となっています。
この日は、まず屋敷拝み(ウガミ)をして、ヒヌカンの周りを掃除して清め、1年間の無病息災に感謝します。
そして年が明けた旧暦1月4日は、昇天したヒヌカンをお迎えする日になります。
ヒヌカンには多くの決まり事がある
ヒヌカンは、代々継承されてきたウグヮンクトゥバ(御願ことば)やヒラウコーの本数や立て方、分家や引越しの際のヒヌカンの仕立て方などには、いろいろと決まり事があります。
沖縄のマンションなどは、台所にヒヌカンが仕立てれるようなスペースがあらかじめ作られていたりするほど、沖縄の人にとってヒヌカンは欠かせない神事なのです。
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