もう20年ほど前の話、社会はマニュアル化に向かって進んでいた。
理由は簡単だ、作業をひとりだけができるのではなく、同じことをみんなができるようにということだ。
仕事のやり方も、先輩の姿を見ながら覚えていくスタイルから、マニュアルを見ることに変わっていった。
そして、仕事はマニュアルに沿って行われるようになった。
マニュアル社会で育った若者たち
マニュアル化になれてしまうと創意工夫が減る、文章の行間を読もうとしないし、マニュアル化されている意図もわかろうとはしない。マニュアルに書いてあることに沿って物事を進めることが当たり前になる。そして、マニュアルに無いことはできなくなる。
コンビニに行くと必ず聞かれること
購入するときには、「ポイントカードお持ちですか?」
お酒やたばこを買う時には、「年齢確認をお願いします!」
たとえ同じ店員であっても毎回聞かれるはずだ。
マニュアル通りである。
高齢者の年齢確認は必要なことなのか
ポイントカードの有無はまだよい。
問題は年齢確認である。
年齢確認の必要性は、未成年の客にお酒やたばこを店が売ってしまわない事、たとえ売ったとしても店側は確認したことを立証して罪に問われることをさけるためのマニュアルだ。
「本人が成人と申告したのでそれを信じた」、「店側は詐称されたので罪はない」と言う。
単なる保身のための段取りだ。
しかし、見た目が明らかに白髪で老け込んでいる高齢者に対しても平気で、
「年齢確認をお願いします。」
と言う。
さすが立派なマニュアル人間だ。
完全に見た目が成人とわかる人まで年齢確認する意味はいったい何なのだろうか。
そこは店員が勝手に「確認しました。」で終わればよい話である。
マニュアルの本質は「未成年にお酒やたばこを売らないこと」
マニュアル通りの手順を踏まなければならないのは、「未成年かもしれない」という疑わしい場合のみでよいと思う。
見た目が絶対に高齢者に対しても、いちいちマニュアル通りの手順を踏んで確認ボタンを押させないでもよいと思う。
そして、そんな理不尽なマニュアルに反発してしまう中高年が時々いる。マニュアル世代ではなく、人の仕事を見ながら覚えていた世代だ。
「おい!、俺が未成年に見えるのか!」
理不尽な問いへの怒りがエスカレートする。
近年はこのような高齢者のクレーマーが増えているという。
中高年層クレーマーの多くに共通するのは、自分がクレームをつけること相手のためになる、店のためになる、ひいては世の中のためになる正義であると信じていることだ。
マニュアル通りの融通が利かない対応が、「見ればわかるだろう」という中高年層のクレーマーを作りだしている。
スーパー店員は存在する
しかし、中には「未成年にお酒やたばこを売ってはいけない」、という本質を心得たスーパー店員がいて感心することがある。
彼らは、お酒やたばこをPOSレジでスキャンすると表示される年齢確認ボタンを、何事もなかったかのように自分で瞬時にタッチする。その動作も慣れていて素早い。
「年齢確認をお願いします。」というアナウンスが流れる前に何事もなかったかのように終えてしまう。購入する人物が未成年かどうかを瞬時に自分で判断して処理しているのだ。
「こいつはできる。きっと他の仕事もできる。」と思う瞬間である。
きっと彼は、マニュアルの行間やマニュアルの意図をしっかりと把握しているのだろう。
彼はきっと、中高年層のクレーマーに出合うこともないだろう。
クレームとクレーマーは違う
最近では、店側に少しでもクレームをするとクレーマーと呼ばれるほど、店もクレームに対して過敏になっている。
店にとっては、クレームとクレーマーが同意義に扱われているような気がする。
単なるクレームであったものが店員の対応によりクレーマーへと変化していく。
マニュアルには心が無い
マニュアルに沿った対応は、それが全てではなく経営者が思い描いた標準化作業だ。
実際、マニュアルに縛られない人ほど仕事が良くできるのは昔も今も変わらない。
マニュアル以上の心がある仕事ができるのだ。
先にも書いたがマニュアルの行間や作ったものの意図ノウハウが全て文字にされているわけではないのだから。
海外ではお酒やたばこの購入にIDカードが必須
まだ海外のように、お酒やたばこの購入にはIDカード提示が必要と法律化されれば割り切るしかないとおもう。
高齢者がコンビニでお酒やたばこを買う時に、
「年齢確認をお願いします。」
と店員が言って確認ボタンを押させる光景を見るたびに、変な世の中だと思うのだ。
なぜなら、いくら未成年ぽい人でも、「年齢確認をお願いします。」と言われ、簡単に確認ボタンを押す。それで、お酒やたばこが買えなかったことは見たことがないからだ。
まあ、それでも童顔すぎる人は流石に無理なのだろうが。
まとめ
「年齢確認ボタンは、童顔すぎる人にとってのみスリリングなボタンである。」