水泳選手として頑張ることに決めた息子に送る我が家流の恒例合宿はダイビングだ。水泳と水中を潜るダイビングは違うスポーツである。リフレッシュするという目的もあるが、ダイビングをやることが水泳の練習にも生きると思っている。
水泳選手として生きるのは大変なこと
水泳クラブでは毎日5km以上泳ぐ。そして、体には疲労が少しづつ溜まっていく。疲労が蓄積すると体を壊すことになるほか、メンタルも健康な状態ではなくなっていく。しかし、休みすぎると体の動きが戻るまでに時間がかかってしまう。
「体調管理は自己責任」とコーチは簡単に言うがそれは無責任である。慎重に体調管理を行っていても、風邪をひくときはひいてしまう。
「熱がなければ泳ぎに来なさい」、「練習は休んではいけない」、と言うが、休息と疲労の改善のバランスがとれないときには、体の免疫力も低下し不調を来すことになる。その中で無理やり泳がされても何のトレーニングにもならない。
本人がいくらやる気があっても、親が見てストップをかけることは多々ある。激しい練習によってこそ、強靭な肉体と精神が養われるということは古い考え方だと思う。
本来コーチも激しい練習をするだけでなく、疲労が蓄積されていないか、心の状態は健康かを注意深く観察しなければならない。
親が一番気を遣うのが、これからの長い選手生活を送るために、過度な練習で体を壊されること、これだけは避けたいと思う。
また、水泳選手として頑張るためには犠牲にしないといけないことが多々ある。友達と遊ぶ時間や趣味にあてる時間などだ。選手は毎日そんな時間を我慢しながら水泳クラブに通う。
平日は、学校→帰宅→水泳クラブ→食事→就寝のサイクルの繰り返しである。土曜日は、水泳クラブでの練習が朝と夕方にあり、大会シーズンにもなると毎土日は大会である。
毎日が水泳中心の生活を喜びと受け取るか、リフレッシュが必要だと感じるかは人それぞれであるが、日本人が好きなスパルタ教育には疑問を感じるのだ。
体と精神面のリフレッシュも練習のうち
私のコンセプトは、決して無理をすることなく、辛いと感じることなく、泳ぐ楽しさを継続させて伸ばすことである。
体の調子がおかしいと思ったら休めばよい。今日は泳ぎたくないと思ったらしっかりと休んでリフレッシュする方がよい。
日本の水泳クラブは練習をさせられる感が強い。選手コースにもなると、週に何日以上は水泳クラブに来なければならないと出席を強制させられる。だが、水泳クラブももっと寛容になり、自ら練習したいという気持ちが湧いてくるまで充電することがあってもよいと思うのだ。
水泳選手として頑張っていても、トップ選手になることができなかった場合は、子供の将来は明るくない。その時は水泳クラブも保証してくれないので親が布石を考える必要がある。
水泳でも学ぶことは多々あるが、これからの人間力を養うために、人生で役に立つようないろいろな経験はさせたいという気持ちが親にある。もしそれが、水泳にも生きることであれば、家族と一緒にリフレッシュにもなるし、一石二鳥ではないのか。
我が家恒例のダイビング合宿
我が家の出した答えは、
年に1回は「ダイビング」、「スキンダイビング」、「スノーケル」などのマリンスポーツでリフレッシュすることである。
すでに家族全員で、アドバンスト・オープンウォーター・ダイバーのライセンスは取得したので水深30mまで潜ることができる。
1日8時間、船に乗り込み、遠く離れたポイントで3本のダイビングを行う。移動時間は結構長く、船の揺れの中を移動するためには体幹を使う。
ダイビングの合間には、船長と一緒にスキンダイビングで獲物をとる。その日の船長の夕食がかかっているので遊んではいられない。
ダイビングを終えると、夕飯まではプール練習だ。ここではフォームのチェックを重点的に行う。物足りない時には、近くの町営プールに出向いて泳ぐこともできる。
それが1週間続く。普段の生活から離れて少し楽しくリフレッシュ出来る側面もあるのだが、結構ハードな合宿であるが、辛さは全くなく知らない間に体が鍛えられてゆく。
ダイビングやスキンダイビングが、水泳の練習に繋がるのか?という人もいるかもしれない。
ダイビングの効果
水中では水圧を感じることになる。水圧が脚を引き締めてくれることにより、カラダの下部に溜まりがちな血液は押し上げられ血液の流がよくなる。この力は深く潜れば潜るほど大きくなり、水圧の増加で脚がコンプレッションとなり、血液はカラダ全体を循環して心臓に戻りやすくなることで、代謝を助ける効果がある。
水中では水圧によって肺の容積が小さくなる。その状態で大きく吸うための呼吸筋が盛んに働くことで呼吸筋の鍛練になり肺機能の向上につながる。この機能が上がると、深くゆっくりとした呼吸でたくさんの空気を出し入れするようになり、普段使っていない肺のすみずみまで酸素を送り込むようになる。そして普段の生活でも酸素をしっかり取り入れられるようになってゆき持久力が上がる。
水中に入ると浮力が加わる。重力と浮力の微妙なバランス状態で泳ぐことで、陸上ではあまり使わない筋肉も総動員してカラダを安定させる。水中でリラックスしてゆっくり泳げば泳ぐほど大きな筋肉は働かず、インナーマッスルを鍛えることができる。
スキンダイビングの効果
スキンダイビングでは水中で行動できる時間が限られるため、無駄を省いたシンプルで滑らかな動きが求めらる。無駄のないフィンキックや、出来るだけ長く水中に滞在するための呼吸法や、潜降時の抵抗を最小化するための直線的な姿勢などが鍛えられる。
このように、水泳に充分に生かされると思うのが私の考えである。
水泳を始めたいと思った原点を見つめる
子供は小学校3年まではかなづちだった。海の波に命の綱の浮き輪もさらわれ、ライフセーバーに救助されたこともある。
かなづちの彼を変えたのはイルカだ。
イルカと一緒に泳ぎたいと思った子供は、スイミングスクールに入校することを選び、小学4年になった時は、イルカと一緒に泳ぐことができたのだった。
「何故、水泳をやろうと思ったのですか?」
水泳クラブに入る時に必ず聞かれた質問だ。
「イルカと一緒に泳ぎたかったからです。」
と言うと、必ず笑われてしまう。
しかし、息子の水泳の原点はここにある。
子供の水泳の原点の場所で、リフレッシュしながら、辛い練習ばかりではなく、泳ぐ楽しみを再認識して、また練習に励んで欲しい。
海での出会いを通して人との触れ合いを学ぶ
そして、中学生になった今、イルカと泳いだ海で巡り合う人たちを通して、自分の世界を広げて欲しいと思っている。毎年関わってくれるみんなが、全国レベルの競泳選手に成長することを願ってくれている。遠く離れていても応援者がいることは励みになる。
昨年も恒例合宿を終えた息子は、期待に応え毎週の大会で1秒づつタイムを縮めていった。
肺機能の向上と重力と浮力の微妙なバランス状態の習得
息子はダイビングをすることで肺機能が向上したのか、今は胸囲が104cmである。
若いとあまり感じないのかもしれないが、年老いた私には、ダイビング合宿を終えて体の変化をすごく感じる。ダイビングを1週間楽しんだ後は、肺の隅々まで空気が吸える感覚があり呼吸が楽になる、全身に力がみなぎるのだ。
ダイビングでは、ウェイトを腰につけて自分の肺の中の空気やBCDの空気が釣り合うことで中性浮力(水中での停止状態)が行える。
だが、息子は水泳の水着だけの状態で自分の肺機能をコントロールする。
5mの水深があるプールで3m地点で中性浮力をとって停止したり、5mの底に寝転んでみたりと、肺だけのコントロールで、重力と浮力を自在に操ることができるようになった。
結果良ければすべて良し
今年も、去年みたいに大会毎に1秒単位でベストタイムを更新できるであろうか。
合宿後のタイムに期待したい。
まとめ
「物事にはいろいろなアプローチがある。」
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