再婚する時に連れ子がいる場合は、「養子縁組して自分の子供として育てる」、もしくは「養子縁組をせず連れ子として育てる」、という法律上の問題が発生する。
再婚により両親が揃うということは子供にとっても嬉しいことだろう。養子縁組は法律的な問題だけであり、養子縁組を組まなくても家族として暮らせることには変わりない。
だが法律的な問題であるからこそ、養子縁組を交わす必要があるのかということをしっかりと考えておかなければならない。
再婚と同時に養子縁組して自分の子供として育てるか
養子縁組には2つの形がある
養子縁組の中には、「普通養子縁組」と「特別養子縁組」がある。
普通養子縁組とは
連れ子再婚の場合にはよほどの場合がない限り普通養子縁組が行われる。
- 原則的に当事者の意思で自由に縁組できる。
- 戸籍上「養親」「養子」と記載される。
- 縁組をしても養子と実親の親子関係は切れない。
普通養子縁組を行っても実親との親子関係が切れることはない。そのため、実親と養親の2重の親子関係が存在することになる。相続も同様である。
特別養子縁組とは
- 家庭裁判所を通して手続きする必要がある
- 養子となる子供が6歳未満で、実親による養育が困難な場合に適用される
※6歳前からすでに養親の元で育てられている場合は、8歳未満までなら適用可能 - 戸籍上は「実親」「実子」と記載される
- 縁組すると、養子と実親の親子関係が切れる
普通養子縁組との違いは養子が実子扱いになる点、手続きが当事者の意思でできない点などがあげられる。
再婚で養子縁組を交わす時期を良く考える
私は普通養子縁組を交わしたことがある。
子連れの再婚のパターンである。
再婚相手との間に実子を授かり、連れ子のことを考えると、
連れ子を法律上においても実子と同等の立場にして育てることが良いのかも。
と思ったのだ。
しかしこの浅はかな考えが、その後何年にもわたって頭を悩ませることになろうとは思ってもいなかった。
連れ子が12歳の時である。
その時は、まだ連れ子とも性格の不一致などは無く、自分の子供として同じように育てることに不安はなかった。そして、養子縁組の手続きは未成年のため私と妻が同意し養子縁組届にサインするだけで終わった。
連れ子が思春期を迎えるころに事態が変わる
連れ子が成長するに従い、いろいろな問題が発生した。
- お使いを頼めば小銭を懐に入れる。
- 家にある小銭をあさり、財布からは札を抜く。
- 家のルールは守らない。
- お金でも何でも借りたものは自分のものという意識で返さない。
- 自分のことしか考えない。
社会的モラルの欠如が決定的である。
その原因は幼少時に遡る
連れ子の実父はお金遣いが荒かった。手持ちのお金が無くなると、子供の目の前で妻の財布からお金を盗り子供を連れて遊ぶ。
ある日のこと、妻が正月用にと銀行から降ろしていた現金を全額財布から抜き、ペットショップで犬を飼ってきたことがあるらしい。その時も子供が一緒だった。
その他にも、自分のあらゆる物を財布から盗った生活費で買ってくる。
それらを幼少期から当たり前に見て育ってきた子供は、
「お金が無くなれば、親の財布からお金を盗ればいいんだ。」
と思ったのだろう。思春期になると同じような行動を取るようになっていた。
私が、いくら「やってはいけない」ことを説明しても、お金への執着は消えず、人を裏切ることに罪のかけらもなかった。
肌で感じる本当の家族
連れ子には過去の親子関係のことを息子に言わないようにさせていた。まだ幼かったのでどう受け止めるかがわからなかったからだ。
しかし、息子は大きくなるにつれて連れ子との性格の不一致を認識する。
この頃はまだ力関係でも連れ子の方が強く、数も2対1であったため優位であり、いつも息子がいじめられる側だった。
その環境の中で息子は、
自分ひとりがこの家の子供ではないのかもしれない。
と思い始めたのである。
そして、いつしか打ち明けないといけなくなると思っていた日がついにやってきた。
ねえ、もしかして僕は父さんと母さんの本当の子供じゃないの?お姉ちゃん達にはいじめられるし。父さんと母さんは、いつもお姉ちゃん達のことばっかりで学校に行ったりして忙しそうなんだもん。
息子よ。いつかちゃんと話をしないといけないと思ってた時が来たようだ。実は、息子1人が父さんと母さんの子供で、2人には別のお父さんがいるんだよ。
へえ、そうなんだ。てっきり僕が違うのかと思ってたよ。よかった。
えっ?よかったで終わり?
だからお姉ちゃん達とは合わないんだね。それが判って気が楽になった。僕が父さんと母さんの子供ならそれでいいんだ。
告白はなんともあっけなく終わった。やはり関係性を肌で感じていたのだろう。
成人してからしっかり見極めろ
連れ子である子供の幼少期に何が性格形成などへ影響を及ぼしているかは想像がつかない。だが実子は、まるで正反対であり親を裏切るようなことはしない。
養子縁組をするということは、結果、相続人になるということだけだ。このような状態では、相続の時に揉めることは目に見えている。
養子縁組する時期が尚早だったのだ。
と反省する。
成長過程で、性格的なことや、他の家族に与える影響もしっかりと見極め、相続に値する人間であるならば、その時に養子縁組を交わすということでよかったのだ。
養子縁組の解消は離婚と同じで簡単ではない
養子縁組した親子が、月日が過ぎてうまくいかなくなるケースはよくあるものだ。
これ以上養子縁組の関係を続けることが困難だと判断した場合は養子縁組を解消することができる。
養子離縁が認められると、養子であった人は、実の両親の戸籍に戻り、元の親子関係が復活する。当然、相続の権利や扶養義務も復活することになる。
普通養子離縁
お互いに協議の上合意して「養子離縁届」を、市区町村に提出して受理されれば、その時点で養子縁組は解消される。
どちらか一方が同意しないときは、家庭裁判所に「養子離縁の調停申立書」を提出して、調停してもらうことになる。
この場合、離縁が認められるのは、3年以上行方知れずになっていたり、親への扶養義務をはたしていない、性格の不一致など、正常な養子縁組関係がない場合に限られる。
特別養子離縁
双方の協議や訴訟による離縁は、認められていない。必ず、家庭裁判所に申立するのが大前提になっていて、家裁の調査で、養子のための離縁が必要であると、明解な理由があったときのみ、審判によって許可される。
この申立が認められると、養子であった人は、実の両親の戸籍に戻り、元の親子関係が復活します。当然、相続の権利や扶養義務も復活することになる。
養子離縁の手続きにかかった2年間
養子に入ることは簡単だが、養子離縁することは簡単ではない。結婚と離婚と同じだ。
私の場合、普通養子離縁の意向を配達証明で送ってから2年が経過していた。
やはり相続権の問題が絡むことで、親子関係は破綻していても相手も離縁を躊躇するのだろう。
2年経ったある日に養子離縁届が届く。
それは連れ子からではなく、連れ子が依頼した弁護士からだった。
養子離縁届に捺印して返送してください。同意して頂けない場合は裁判にします。
2年前に離縁の意向を送っているのに弁護士に依頼するとは、何ふざけてるの?
何かおかしい。こちらが先に送っているのにわざわざ弁護士を介して送ってくる理由が見つからない。
きっとこれには隠された何かがあるに違いない。
まあ、あちらが養子離縁したいと言っているうちに済ませておくか。
早々に養子離縁届を返送する。
そして後日、その連れ子達とは円満に普通養子縁組の解消に至った。
弁護士に依頼してまで養子離縁を迫ってきた理由
その後2年間も放っておいて、わざわざ弁護士に依頼してまで養子離縁を迫ってきた理由がわかる。
連れ子が結婚したのだ。
そして、結婚後の籍は男に入らず、連れ子の籍に入った。
なるほど、そういうことだったか。
それは、
結婚はしたいが男の金融トラブルで困っている。だから籍を変えることにより別人になる必要があった。その事情を私達にも知られないようにするためには、婚姻前に新しい戸籍を作り、そして婿養子として入れた。そうすれば私の戸籍との繋がりもなくなる。だから債務整理を依頼した弁護士が送ってきたのだろう。
時間がかかったが、実子のためにも離縁できて本当によかったと思っている。
再婚する時に養子縁組は急がない方がよい理由
養子縁組がいけないことはない。
私のようなトラブルにならないよう、養子縁組を考える時期は子供が成人になり、人物がはっきりと固まってからにするべきだと思うのだ。
子供が小学生くらいであれば、私のように自分の気持ち的なことで養子縁組を急がない方が良い。
その子の幼少期を知らなければ、何がその子の人格を形成に影響を与えて今後どのように影響し育ってゆくかは想像がつかないからだ。
他人は他人、よく見極めるべきなのである。
まとめ
養子縁組はいつでもできる。養子縁組を交わす前に本当に交わす必要があるのかを考えよ。