高校生になって水泳選手を続けることの難しさ

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南国気分

今年度の高校入試が終わった。

「高校生になっても水泳選手として頑張りたい」という子供が高校入試を迎えたが、ふたを開けてみると「高校生になって水泳を続けることの難しさ」を考えさせられるものだった。

きっと都道府県により事情は異なるのだろうが、これは私が住んでいる地域の話である。

水泳に力を入れている高校がない

高校の強化スポーツ

中学時代に県大会や全国大会で実績を残した者には門が開かれる。いわゆるスポーツ推薦である。だが、水泳のスポーツ推薦がある高校は少なく公立は2校、私立は0校のみだ。実績がない子供は推薦入試や一般入試で水泳部がある高校を目指すことになる。

それぞれの高校には強化スポーツというものがある。ほとんどの場合、強化スポーツの対象になっている競技は、野球、サッカー、バスケットなどの団体競技だ。中学まで水泳をやっていた者も高校に入ると他のスポーツに取り組み、水泳の競技人口が減ってくる。

学校が強化スポーツとして取り組んで実績を残すと補助金が出るらしく、強化スポーツをやっていれば推薦など高校入試に有利に働く、だが水泳などの個人競技を対象としている高校は少ない。

ある強化スポーツがサッカーで全国大会に出場した高校では、翌年から高校サッカーの人気校になった。そして、そのあおりを受けて部員20人ほどの水泳部は廃止されてしまった。

水泳部はあってもプールがない

当たり前だが、水泳部がある高校は高校生の大会に出場できるが、水泳部がない高校からは大会には出場できない。

公立高校は、プールがあり水泳部もある高校が多いが夏の間しかプールは稼働していない。そして私立高校は、プールも水泳部もないところが多い。

プールがない高校で水泳部があるところは地域の水泳クラブと提携しているか、各自が所属する地域の水泳クラブで練習することになる。

昭和のある時代は水泳が盛んであり、いろんな所にプールが作られたが、そのプールも老朽化しており数も減っている。いつしか水泳は地域の水泳クラブが主体となり、学校でのスポーツではなくなってしまったのだ。

個人競技は不利

高校の大会に出場するには学校の先生の引率が必要になる。

中学校の大会では保護者の特例引率というものがあり、学校の先生が引率できなくても保護者が引率することで大会に出場できるが、高校の大会では学校の先生が引率しないと出場できない。

そして引率するには経費がかかる。地区大会までなら良いが、ブロック大会や全国大会となると高校は引率教師の交通費、宿泊費、日当を負担しなければならないし、公立高校では税金で賄われることになる。

だが、それが野球で強化スポーツであり春や夏の甲子園に出場するとなれば、学校の先生も喜んで引率する。そして深夜バスも繰り出して全校挙げての応援になる。スタンド入りメンバーや補欠メンバーだけでも相当な人数が参加するので寸志を集めるなどして一丸となって大会参加を盛り上げる。

しかし水泳競技では、高校に入ってから水泳を始めた選手も含まれるため、県大会、ブロック大会、全国大会に出場できる選手は何人もいない。

そんな少人数の水泳選手のために、野球と同じ夏にトップシーズンを迎える時期に水泳競技の引率を快くやってくれるという高校は少ないのだ。

文武両道をうたう高校の本音

とある公立高校では文武両道をうたっている。

高校に入ってサッカーをやりたいというのでその高校を選んだ子供のお母さんが、入学説明会で勉強レベルを上げないとクラブ活動はできないということを聞き、中学の進路指導の先生に「高校でサッカーができると聞いていたのに全然話が違うじゃないか!」とクレームを入れた。

その高校では入学と同時に勉強合宿が始まる。夜まで講義とテストの繰り返しで運動は勉強の合間のラジオ体操だという。そして合宿が終わると確認テスト、定期テストと続きクラブ活動にいそしんでいる時間はないうちにトップシーズンが終わる。

高校でスポーツをやりたくても、学力があるレベルに達しないとクラブ活動にも参加させてもらえないのだ。

このため1年間はクラブ活動をあきらめて勉学にいそしまねばならない。

この1年間のブランクは大きい。頑張って2年生で元の競技レベルに戻ったとしても、3年生になれば今度は大学受験のための勉強が待っている。

結局、文武両道を実践し高校でクラブ活動ができるのは2年生の1年間だけだ。だがそれも定期テストの点数が落ちれば、クラブや大会に参加することも許されなくなる。

スポーツを頑張りたいと思って高校に入っても実際はできなかったということがあるのだ。

学校がうたう文武両道とは、「勉強とスポーツに励め」という意味ではなく、「勉学にいそしんで結果を出せばスポーツをやっても良い」ということである。

高校で水泳をやるなら公立か私立か

選手が有名になれば高校の知名度が上がる。私立高校にとっては嬉しいことだ。だが、野球部やサッカー部があるため水泳の大会引率はできないという私立高校と、高校の宣伝になるということで水泳部がなくても大会に出場できるようにサポートしてくれる私立高校がある。

公立高校はスポーツ選手が有名になって高校の知名度が上がる、そんなことは全然求めていない。難関大学に何人入れるかということが大事なのだ。

そのような学校の特色はオープンスクールや学校説明会などでは知らされない。中学校の先生に充分なリサーチをお願いしないといけないだろう。

まとめ

偏差値が高い学校でも余裕で勉強についていくことができる生徒で、水泳は県大会またはブロック大会を目標としているのであれば公立高校を選んで良いのだろう。公立高校では強化スポーツ以外で全国大会を想定していないように思う。

水泳で全国大会を目標にしているのであれば、偏差値を下げてでも野球、サッカー、バスケットの強豪校でない私立高校の方が良いだろう。引率の問題や公休扱いなど、きっといろいろな面でサポートしてくれるからである。そして私立大学との繋がりは私立高校が強いのだ。中学校の同じクラスの人で高校に入ってスポーツに取り組む者はみな私立に進学した。

偏差値の高い高校を取るか、偏差値の低い高校でスポーツでの頂点を目指すか。

文武両道に踊らされ、二兎を追う者は一兎をも得ずということにはならないようにしたいものだ。

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