交通事故に遭った時、相手と直接示談交渉を行うことはあまりないだろう。普通の人は任意保険に加入しており、任意保険会社が示談交渉を代行することになる。
保険会社の担当者は、いわば交通事故の示談交渉に関するプロである。対等に渡り合うためには、それなりの心構えが必要になる。
私の経験では、軽微な事故案件では女性担当者が窓口になってくることが多く、大きな事故になると男性担当者が窓口になる印象だ。
示談交渉の際に大切な4つの心構え
示談交渉の際には、4つの心構えが重要となる。
- 交通事故の過失割合に対する知識を持つ
- 修正要素を踏まえ、交渉の準備を行う
- 強い姿勢で臨む
- 冷静な対応を心がける
交通事故の過失割合に対する知識を持つ
示談交渉の際に一番重要なのは、交通事故の過失割合に対する知識を持っておくことだ。実務上、過失割合を決めるときには判例タイムズという本が広く利用される。
判例タイムズには、四輪車と歩行者の事故、 四輪車同士の事故といったように区分され、更に信号機のある交差点での右折車と直進車とか、一時停止規制のある交差点での出会い頭の事故など 細かく類型化され、典型例として基準化されている。
典型例にはそれぞれ基本割合が定められているので、まずは自分のケースに当てはまる典型例を探し出せばよい。
保険会社は、この一般的な典型例に基づき過失割合を提示してくることになる。しかし、そこには個別の事故事情は含まれていない。
修正要素を踏まえ、交渉の準備を行う
交通事故は、すべて異なる事情を抱えている。一方が大型車で一方は普通車である場合や、 一方が飲酒運転の場合、一方がわき見運転である場合などの事情にまで、基本過失割合による解決を貫き通すのは妥当ではない。よって公平性が保たれるように、過失割合の値を修正すべき事情のことを修正要素という。
しかし、保険会社はこの修正要素にはあえて触れずに基本過失割合により話を進めようとするのだ。保険会社の担当者は、交通事故問題を何度も経験しているプロである。ここで反論できなければ、「交通事故に関する知識がない」と、すぐに見抜かれてしまう。
知識がないと思われると、無知につけ込んで不利な条件での示談となったり、いい加減な対応をとられたりする可能性が高くなる。そのようなことにならないためにも、保険会社と話し合いを始める前に、交通事故の過失割合と個別の事情による修正要素を見極め、交渉の準備をしておくことが大切である。
強い姿勢で臨む
相手の保険会社は、「この度はどうもすいませんでした。」「お体は大丈夫でしたか?」などと優しい言葉を使い交渉を始めるが、決してあなたのために親身になって示談交渉をしようと思っているのではない。
保険会社は、あくまでも「契約者の示談交渉が有利に行えるようにしか考えていない」ことを忘れてはいけない。
多くの場合、最初に提示される金額は、最も低い自賠責基準に少しだけ上乗せされた金額に過ぎない。なので、最初の段階で判例や修正要素から考えられる限りの大きな額を提示することが重要になる。
充分な補償を受け取るためには、遠慮せずに自分の権利をきちんと主張しなければいけない。
冷静な対応を心がける
保険会社が提示してくる示談内容に不満があったとしても、感情的にならずに始終冷静な対応を心掛けないといけない。
保険会社からの電話は常に録音されている。そして、こちらが電話で話した内容は全て記録される。たとえ示談が成立せずに裁判へ移行しても困らないように記録を作り始めているのだ。
なので、保険会社も契約者が不利になるようなことは決して言わない。
相手側がそれを証明する必要があるからだ。
まとめ
「保険会社は契約者の示談交渉が有利に行えるようにしか考えていないことを忘れてはいけない。」