水泳クラブの保護者の中には、「私は経験者だ」と自慢して本物コーチに物申す者がいる。彼の子供は選手コースにいるので無下にもできない。水泳コーチという職業も大変である。
しかし、コーチは慣れたもので、
そういう人は時々いますが、私はプロで彼は素人です。コーチは、子供たちを自分に振り向かせてなんぼなので、気にしませんよ。
と言う。
私は、えせコーチには興味がないし、下級コースの話なので影響もないのだが、となりの長椅子で大声で話されるといろいろな事が自然にインプットされてしまう。
水泳クラブが終わって特別レッスン
まずは、ジュニア育成クラスの母親に近づいて仲良くなることから彼の作戦が始まる。
きっと伸び悩んでいるなと思う子供たちを選んでいるのだろう。
あのコーチの教え方じゃ、早くならないよ。
え~、早く速い選手になって欲しいんだけど。
僕は市営プールで水泳を教えているんだけど来てみる?明日の土曜日はどう?
明日はあの子のお姉ちゃんを塾に連れて行くから難しいなあ。
大丈夫、僕が子供を送り迎えするよ。何時に迎えに行けばいい?
お姉ちゃんを9時に連れていかないといけないから。ちょっと早いし。
僕は早くても全然大丈夫だよ。じゃ、8時30分にお迎えに行くね。
そして、その母親の子供は水泳クラブ外レッスン参加者の一員になった。
水泳大会の出場種目は俺が決めるのだ
ある日、ジュニア育成コースの練習が終わっても、ある母親とえせコーチが帰ろうとしない。すると練習が終わった子供が観覧席にやってきた。
僕は大会に出れますかって、〇〇(えせ)コーチに聞いてごらん。
そうだった、今日は大会申込の締切日だったのだ。
〇〇(えせ)コーチ、僕は大会に出れますか?
でれます。
何なんだこれは、茶番劇でも始まるのか?
どの種目に出れば良いか、ちょっと〇〇(本物)コーチに相談して来ますね。
なんで?、〇〇(本物)コーチに聞かなくても俺が決めるよ。俺がコーチだから。
クラブは所属させてくれれば大会に出れるからいいの。教えてるのは俺だよ。
ん~そうね。じゃあどの種目に出ればいいかしら。
〇〇(えせ)コーチ、僕はどの種目に出れますか?
こうして子供の出場種目は無事に決められた。
水泳大会での行動はコーチ並み
えせコーチは、水泳大会でも自分が教えている子供たちが泳ぎ終わると、交互に選手控場所から呼び出す。
小規模な水泳クラブのため、本物コーチは大会役員をしているので選手のそばにいない。はたから見ると、えせコーチが水泳クラブのコーチに見えるような光景だ。
今の泳ぎは後半がいけなかったな。
行きは〇〇秒で帰りは〇〇秒だったよ。
スタートの反応が遅いからもう少し早くしないと。
〇〇ちゃんのフォームは完璧だ。美しい。
などと、手や腕のマッサージをしながら話している。
ベストタイムが出ると、
ほ~ら、俺が教えたから早くなっただろ。まあ僕が教えるとこんなもんだよ。
と、本物のコーチの実績さえもさらっていく。
俺が教えるフォームが一番だ
最近のクロールのリカバリーは、有名選手の影響なのか腕を曲げないで泳ぐストレートアームで泳ぐ選手が多い。
そういえば、若かりし頃にハイエルボーに疲れた時、今で言うストレートアームみたいなことをやっているとコーチにめちゃくちゃ怒られた記憶がある。
ハイエルボーは数えるほどしかいないが、大会の上位選手にはハイエルボーの選手が多い。私はハイエルボーが好きだ。子供にはハイエルボーで迫力ある選手に育って欲しいと思う。
えせコーチが教える1人の生徒はストレートアームであるが、そのフォームより息継ぎが気になって仕方がない。彼女は、練習でも大会に出ても同じ息継ぎをするのだが、この子以外の選手では見たことがない新呼吸法なのだ。
何が違うのかというと、普通は左右どちらかで息継ぎをする。しかし、彼女は左で呼吸した後に、すぐに右でも呼吸する。左、左、左右、左、左、左右、これを繰り返す。
左右の呼吸が入るのは、左が何回の後と決まっている訳ではない。来るか!、来るか!、来るか!と期待させておいて、今来たか!という感じで左右が入るので、見ているほうは釘付けになってしまう。もしかして、これが狙いなのか。
これがどんな呼吸法であるのかが判らないままでいるのだが、1呼吸するところを左右対で呼吸することで一瞬であるが体が停止しているのがわかる。
コーチは、
左右一対で首を振って呼吸をするな。
と何度も怒るのだが聞く耳を持たない。
そしてえせコーチは、私のとなりの長椅子で、
彼女の独特な息継ぎは俺が教えたんだ。
彼女の泳ぎは綺麗だ、完璧だ、美しい。
と自慢している。
大会でも泳ぐ前にも、
左右、左右、左右を忘れるな!
と喝を入れる。
もしかして、これはまだ誰もが知らない新時代の呼吸法なのだろうか。
まあ、この斬新な呼吸法には興味がないのでスルーしておこう。
サイズが売っているものは使うのが当たり前だろ
水泳クラブでは、最近「フィン事件」と勝手に呼んでいる事件が起こった。
この水泳クラブでは、ジュニア育成の段階からフィンを使わせているクラブで、生徒のほとんどが小学生である。この中にえせコーチ組の生徒は5人ほどいる。
ある日のこと。えせコーチ組を代表して1人の子供がコーチに懇願した。
僕たちはゴールドフィンを使いたいんだ。
ゴールドフィンとは、ハイドロテック2という水泳用フィンでハードタイプのものである。
コーチは、
ゴールドフィンを使うのは100年早い。
と言ったらしい。
きっとコーチは、
小学生にフィンが固いゴールドフィンを使わせることは負荷が高い。
とでも言いたかったのだろう。
このやりとりはすぐに母親が知るところになり、母親からの緊急電話を受けたえせコーチは、15分程で水泳クラブに駆けつけてきた。
近くにいたからすぐに来たよ。俺がコーチと話をしてやる。俺がせっかくヤフオクで買ってプレゼントしたのだから文句は言わせないよ。
と、息巻く。
そしてコーチに、
ゴールドフィンを何故使ってはいけないのかを説明しろ。フィンメーカーが小学生の足に合うサイズを出しているのだから使っていいということだろう。コーチなら勉強しろ!
と食ってかかった。
正直、言ってることの意味が分からない。
結局、コーチはゴールドフィンを使うことは許さなかったが、えせコーチが推奨する別のソフトフィンを使うということで折り合いがついたようだ。後日、ジュニア育成コースの全員がそのフィンを買わされることになった。
そして、えせコーチは母親に言う、
あのコーチは水泳のことを何もわかっていない。だから、僕の言うことを聞いていれば早くなるよ。水泳クラブで購入しないといけない用品は、僕に聞いてから買ってね。僕がOKしないものは買わなくていいからね。
今日も、えせコーチと本物コーチのバトルは続く。
まとめ
「コーチはクラブの専属コーチ1人で良いと思うよ。お母さん。」
コメント
こちらこそ、いつもお返事くださってありがとうございます。
ジュニアオリンピックの記録は参考程度にしてマイペースです。萩野選手の12歳時のジュニアオリンピックの200m個人メドレーの記録が2分15秒台で、とても驚きです!それからトップをずーっと保つのは、大変な努力があっての事と思います。
私もみのり様と同じ様に、息子が高校生で背も記録も伸びると良いと思っています。それまでは、泳ぐことが嫌いにならない様に続けたいですね。選手になると週末は記録会につぶれて親も結構大変ですし、どこまでポジティブに選手生活が出来るか…だと思います。
女の子は16-20歳くらいがピークですが、男の子は18-24歳だと思うので、みのり様のお子さんと何処かの大会でお会い出来るかもしれませんね!お互いにそんな日が来るのを楽しみにしましょうね!
こんにちは!とっても楽しく読みました。読んでいるとその場面が目に浮かび、ニアニアしてしまいました。えせコーチも一生懸命で良いですね。どうせなら資格を取って本物コーチになって欲しいですね!
ところでこちらの全国規模の大会ですが、出場出来るのは12歳クラスからになります。息子は一番下のクラスに出場し、このカテゴリーで最高4位でした。が、記録は日本のジュニアオリンピックの予選タイムくらいです。いつも日本のジュニアの記録を参考にしていますが、とっても速くてビックリします。主人は競泳経験者ですが、本当の記録か?と信じられない様です。
みのり様のお子様は75kgあって羨ましいです。まだ背も伸びると思うので、水泳向きに大きくなってくれると良いですね。選手コースが遅かったとお話しされていますが、週一で楽しく泳いだのはとても良い事と思います。選手になってからは大変ですから、少し体力がついた時期で良かったと思いますよ。息子は泳ぎ始めたのはオムツの時からで早かったのですが、クラブに連れて行ったのは8歳でした。それまでは家族三人で地元のプールで遊んでいた程度です。体重が37kgしかありませんので、大きくなるのはのはもっと先になりそうです。
こちらの練習は、技術もそうですがスプリント系を余りしないので、ちょっとダラダラ泳いでいる感が有ります。私的には、選手育成の考え方の違いとプールを取り巻く環境が日本より劣ると思っています。それで色々勉強しています。みのり様のブログはとても分かりやすく説明がされていて参考になります。
ドルフィンさん、こんにちは。
いつもありがとうございます。
ジュニアオリンピックの予選タイムとは素晴らしい。
そして競泳経験者のご主人がサポートされているとは心強い、これから大きく成長してきっと強い選手に育つことでしょう。
ご主人さまが言われるとおり、本当にこの年齢での記録かって思いますよね。
私のところは遅咲きを狙っているので、高校生になるころには全国レベルの大会で入賞してくれればと思っています。
国によって選手育成の考え方が違うのですね、とても興味深い内容です。