通常、どの水泳クラブでも集団行動や同じチームとしての意識を要求される。個人競技ではあるが、遠征に行ったり合宿に行ったりすると統制がとれないと困る。そして、下級コースの選手が、上級コースの選手に敬意を払えるクラブは、見ていてもすがすがしいものだ。
あるクラブでの選手コースで感じたこと
あるクラブで選手コースを体験させてもらうことになった。体験なので今までの水泳クラブの水着を着用する。
コーチが、そこら辺を歩いていた本科生を呼び止めて、
この子にロッカーや体操ルーム、プールに入るまでを教えてあげて?
と言ってくれた。見た目は子供と同じ小学校6年生みたいだ。
わかりました。案内します。
こちらがロッカールームです。
とても元気が良い。
いろいろと説明してくれて、子供も困ることはなかった。
水泳クラブへ入会する
この水泳クラブは期待できると思い入会することにした。
体験の時にいろいろ説明してくれた本科生と子供は仲良くなり、この日も水泳クラブに行くと、子供と本科生の子がハイタッチをして一緒にロッカールームに消えていった。しかし、その本科生は、ロッカールームで一緒に水着に着替えていてあることに気が付く。
選手は好きな水着を着ることができる。本科生の水着は指定されているのだ。
すると先日の本科生の子が、
あなたは、選手コースの方だったのですね。昨日はどうも失礼しました。
と子供に言ったそうだ。
子供も突然そんなことを言われてとてもびっくりしたらしいが、
これからもよろしくね。
と答えた。
上級コースの選手に対する憧れ
水泳クラブでは、本科コースにも沢山の段階があり、ジュニア育成コース、育成コース、選手コースと上がってゆく。
本科コースの人にとっては、育成コースや選手コースなんて雲の上の存在みたいで少し怖い存在だろう。でも、そんな選手たちを見て「俺もいつか上のコースに上がってやる」と思うはずだ。
私は、体育会系クラブによくある年功序列の上下関係が嫌いだ。でも、上位の選手に憧れる気持ちが、自然に先輩に対しての挨拶や行動に現れる、そんな教育をしている水泳クラブには頭が下がる。
移籍後の水泳クラブの状況
半年後、家庭の事情でクラブを移籍しなければいけなくなった。
新しい水泳クラブも体験の時だけは好印象だった。選手コースの生徒たちは「こんにちは」と明るく挨拶をする。そして練習が始まるとガラッと雰囲気が変わり真剣モードだ。
挨拶するのは体験のときだけ
しかし移籍してみると、本科生、ジュニア育成、育成コースの誰もが挨拶できなかった。
あれは、体験がある時だけのパフォーマンスだったのだ。
プールでの練習中にも、ジュニア育成や育成コースの生徒は笑いながら遊んでいる。それぞれのコースのプライドが感じられない。これでは、本科生が「いつかは育成コースに上がりたい」とはきっと思わないだろう。
体験のときしか挨拶はしないんですね、この水泳クラブ。
それに危機感を抱いたコーチは、ベストタイムを基準にして、ジュニア育成コース、育成コース、選手コースの再編成を行った。
各コースの年齢基準に満たないものは、年齢が上でも下位のコースへ移らされた。緊張感が現れてきたし、とても良いことだ。
しかし育成コースには、小学生の中に選手コースの新基準に満たなかった中学生が落とされることになった。この中学生たちは、選手コースにいたときには先輩の目を盗んで練習をさぼったりしていた生徒たちである。
そして、この中学生たちが、ある問題のリーダシップを発揮することになる。
集団意識が出て統制が取れてきた
それまでは、全然バラバラで集まることがなかったジュニア育成コースと育成コースであったが、コースの再編後、中学生を中心とした集団が形成されるようになった。
観覧席から見ているジュニア育成の母親は、
成長したのね、やっと集団意識が育ってきたのね。
と喜んでいる。
その集団の雰囲気を見ていて変な予感がする私は、選手コースの子供に聴いてみた。
ああ、あれは中学生や小学生の上級生が中心となって集団でいじめをしているだけだよ。
と、思ってもいなかった答えが返って来た。
決して集団意識が高まったのじゃなくて、いじめの集団が形成されたのだった。
そういえば、最近何人かの初見の父親が頻繁に観覧席に来ているがそういうことだったのか。彼らはいじめられた子供たちの父親で見張りに来ていたのだ。
おまえは遅いんだよ。
俺が泳ぐときに邪魔になる。
そこは俺が座るところだ、どけろ。
挙句には、ふとももに肘鉄をくらわせて相手を泣かせたり、やりたい放題だったらしい。
すごい!、やっとうちの子が集団行動をとれるようになったわ~。
と喜んでいるお母さん。
安心して下さい、子供さんはちゃんといじめグループで集団行動できています。
ですが、いじめはいけません。
まとめ
「集団行動と集団いじめは違います。」
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