老人ホームでの高齢者虐待がニュースになることもあるがそれは氷山の一角である。
高齢者虐待が疑われる相談通報件数は年間1000件以上におよび、このうち虐待ありと判断されたものは4割程度になる。
老人ホームでの高齢者虐待の状況
厚生労働省の調査によると、高齢者虐待と認められた件数は、養介護施設従事者等によるものが平成26年度では300件で、前々年度より79件(35.7%)の増加。平成27年度では400件であり、前年度より108件(36.0%)増加している。
施設では、「特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)」が125件(30.6%)で最も多く、次 いで「有料老人ホーム」85件(20.9%)、「認知症対応型共同生活介護(グループホー ム)」65件(15.9%)、「介護老人保健施設」37 件(9.1%)となっている。
虐待の要因としては、「教育・知識・介護技術等に関する問題」が246件(65.6%)で最も多く、次いで「職員のストレスや感情コントロールの問題」101 件(26.9%)、「虐待を行った職員 の性格や資質の問題」38 件(10.1%)である。
老人ホームの実情
平成12年に始まった介護保険制度により老人ホームやグループホームなどが増えていった。
当初は「これからの高齢化社会に向けての熱い想い」で起業した人達も多かった。介護保険制度の開始から17年、老人ホームやグループホームなども淘汰が進み、それまでは全く介護業界とは関係のなかった大きな企業が買収して運営している。
それらの企業が運営する老人ホームやグループホームでは、施設のトップには介護に携わったことがない親企業の異業種の人材を配置することになる。このため「介護するにあたって何を考えて何をしなければいけないか」ということが疎かになってしまうことが「教育・知識・介護技術等に関する問題」に繋がっているのではないだろうか。
介護業界は給与も低く3Kと呼ばれる
介護保険制度は、当初「介護保険で老後は安心」のようなイメージであった気がする。
そして介護報酬もやや高めの設定であり、「就職がないからとりあえず介護業界に」という人も多く人材も集まった。
しかし高齢化に伴って需要が急増すると介護サービスの介護報酬の抑制が行われ、最近では、介護業界は給与も低く3Kと言われることで人材が集まりにくい業界になった。
インフラの中で難しいのは優秀な介護スタッフの確保だ。介護スタッフは人数がいればいいという訳ではない。本当にその人の立場に立って考えて介護をしてくれる人が少ない事に愕然とする。
御婆捨て山と言われていた時代の再来
最近の老人ホームでは、その昔、「老人ホーム=御婆捨て山」と言われていた時代を思い出させる光景に出会うことが多い。
認知症の人に対しては見くだした命令口調で話し、家族が見れないから見てあげていると思い上がっている。
仕事があるのも、施設が成り立つのも、入所者さんのおかげだという事は忘れ、自分が世話してやっていると強気の態度をとる。
ある大企業が買収した老人ホームでは、自分たちが急にエリート社員にでもなったと勘違いをして見えないところでは介護放棄する人もいる。
それを見る家族は腹立たしいが弱気にならざるを得ない。何故なら大切な親を人質にされている気持ちになるからだ。密室での介護がどのように行われているかは家族も知りようがない。
「ならば預けなければいい」と思う人もいるだろうが、いろいろな理由と状況の中で、自宅での介護が困難な場合は、入所してもらうことを仕方なく選択をするしかないのが実情だ。
介護の仕事を選んだ時の心得え
もし、老人に接する仕事を選んだら。
「自分の親ならこうして欲しい」
「自分が歳をとった時こんなふうにして欲しい」
など考えながら介護して欲しいと思う。
まとめ
「高齢者を虐待する人は、自分が高齢者になった時に思い知ることになるのだろう。」