水泳クラブのコーチとえせコーチの最終決戦

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水泳クラブの保護者の中で、「私は経験者だ」と豪語し水泳クラブに対していろいろな事を要求する者がいる。私はそのコーチをえせコーチと呼んでいる。

水泳クラブの中で繰り広げられる、コーチとえせコーチのバトルの模様を書いた。

水泳クラブの保護者の中には、「私は経験者だ」と自慢して本物コーチに物申す者がいる。彼の子供は選手コースにいるので無下にもでき...

えせコーチは、早くなりたいと思う子供の母親をターゲットに甘い言葉をささやく。

「僕が教えれば早くなりますよ~。」

希望者を集め、水泳クラブが休館日の時は市営プールで特別レッスンを行ったり、大会に来ては自分が教える子供たちに対して、まるで本物のコーチのように振る舞う。

ある大会では、えせコーチが水着を着ている女子の股間に手を入れ、「バタフライはこうやって腰を振るように動かすのを忘れるな」と、股間のその手を前後に激しく動かしていた。これは間違いなくタイホされる行為だが、親はそれを見て「そうよ、そうやって動かすのよ」と普通に言っている。このえせコーチも親も選手も重症だ。

しかし、それまではトップシーズン前でのことあり、水泳クラブ側も「そういう人は時々います。」と言う程度でしか考えていなかった。

だが、状況は一変する。

それから1か月、早くも最終決戦の火蓋が切られた。

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えせコーチ合宿が開催

ある日、えせコーチと、特に仲の良い母親が観覧席に現れた。

こういう時は決まって何かが始まる。

えせ「今日は7月8月の練習スケジュールを作って来たんだ。合宿も入れてるよ。」

・・ほぅ、水泳クラブ外での練習スケジュールか。

母親「ありがとう、合宿は誰を誘う?」

えせ「AちゃんとBちゃんとCちゃんを誘ってもいいかな?」

母親「いいよ、これで私たちの費用も出るかしら?」

えせ「大丈夫、出るよ。」

・・なるほど、参加者を多く集めて自分たちの費用を出させる魂胆か。

母親「どう誘えばいいかな?」

えせ「僕が話をするよ、怪しまれるといけないからね。君はその場所にいない方がいい。合宿では、僕が君に母親役を頼んだということにして、僕が父親役をするからということで。」

母親「わかったわ。」

・・すごい、そこまでして儲けるのね。タダで教えてるわけではないことはわかっていたよ。

えせコーチ合宿と独自練習の勧誘活動が始まった。

ターゲットのみなさんはいとも簡単に引っかかった。そして、大会前週の週末、コーチが大会でベスト出せるように調整している最中に2泊3日の合宿を決行したのだった。

また水泳クラブの大会前日練習にも、えせコーチ組は姿を見せなかった。大会会場になるプールで独自調整をやっていたのである。

トップシーズンに向けての調整

7・8月、水泳はトップシーズンとなり、大小のいろいろな大会が行われる。

本物のコーチは、大会で選手がベストを出せるようにと調整してゆく。コーチ力の見せ所だ。

コーチが用意したメニューをこなし、練習量も調整して大会でベストが出せるように組み立てるのだ。

それが大会当日ではなく、大会の前後にベストが出てしまうのはコーチの力量不足だと言う。

コーチが考えるとおりに選手にベストが出れば、コーチも選手も親も嬉しい。

鬼コーチもニコッとする瞬間である。

しかし、今年は大会で選手がベストを出しても、コーチがニコッとすることはなくいつものように険しい表情が続いていた。

水泳クラブのコーチが気が付いた変化

選手がどんどんやせてゆく

コーチの口癖は、「しっかり食べさせて下さい。」だ。

栄養をしっかりとって体力をつけると共に、成長期に体を大きくすることが大事なのだ。痩せている状態で筋肉を鍛えると固い筋肉になる、脂肪をつけて筋肉量を増やしてゆくと柔らかい筋肉が増えるという。

暑くなると夏バテで食欲が低下して痩せる生徒もいるが、今年は様子が違った。水泳シーズンに向かうほど、何人かの生徒がどんどん痩せてゆく。観覧席から遠目で見ていてもわかるほどだった。

選手のフォームが崩れてゆく

フォームが理想的なフォームに変化してゆくのであればコーチも問題にしないだろう。

「左、左、左右、左、左、左、左右」というような変則呼吸をする生徒が増えたのだ。

コーチは「左右で1回呼吸するのはやめなさい。」と言うが、一向にやめる気配がない。

選手が泳ぐコースがコーチの思惑と違う

この水泳クラブでは、生徒が泳ぐコースをコーチが決めている。

壁よりのコースには大きい生徒を入れないように、途中で金魚のフンのようにならないように、同じタイムの選手を並べるなど、いろいろな要素を考えてコースに選手を割り振るのだ。

選手もコーチが指示するコースをわかっており、自分の泳ぐコースに入ってゆく。

しかし、コーチが多忙で練習開始にいないときなど、コーチの思惑とは全然違う態様になったりすることが増えたのだった。

点と点が線に繋がった瞬間

えせコーチ合宿が行われたことを知ったコーチは、いったい何が起こっているのかを悟った。

コーチが気づいた変化は、すべてえせコーチの指示によるものだったのだ。

  • 痩せた方がタイムが伸びる。
  • 生理がくると体格が変わって困るから食べないでやせろ。
  • 僕が言うとおりにフォームを変えろ。
  • 練習では自分が泳ぎやすいコース、順番に入れ。

今はそれでタイムが出るかもしれないが、そんなガリガリのオリンピック選手なんか見たこともない。

また、えせコーチの指示は、クラブ運営に関わることさえもある。

  • 水泳クラブのユニホームはいらない。ポロシャツ以外は買わなくていい。
  • 競泳水着はオークションで安いのを買え。
  • 水泳クラブの指定用品は買わなくていい。必要な物は僕が決める。

決戦の火蓋が切られた

合宿に参加した選手は7名になる。

大会前にクラブ外の合宿が行われたことを知った鬼コーチは、えせコーチ合宿に参加した選手の親との面談を始めた。

「当クラブでは年間のスケジュールから月のスケジュール、更には日々のスケジュールを作成して練習内容と練習量を管理している。大会前にえせコーチの指導で個別の調整を行ったりするのであればクラブでの管理が行えないので、えせコーチのクラブを作ってもらい移籍してもらってよい。」

という内容であったらしい。

しかしコーチは面談前に、

「水泳クラブの方針に従うということは一筆書いてもらっている。大会前の大事な時期にえせコーチ合宿などされては影響が大きく問題である。その合宿に参加した選手たちはクラブをやめてもらうことになるでしょう。」

と話していた。

だが面談後、えせコーチのチームは何事もなかったかのようにクラブの練習に参加している。そして、えせコーチは出禁にもならずクラブに顔を出しているが、何かギスギスしている雰囲気を感じる。

きっと、水泳クラブは選手コースの人数が減ることで収入が減ることを恐れて強くは言わなかったのだろう。

そして、えせコーチのチームは、「クラブに迷惑をかけることはもうしません。」と表面では繕いながら、これからは隠密行動を取ることを誓ったのではないか。

現状は一度は問題が表面化したが、利益を優先させることで、もう一回問題を地下深くに埋めなおしたというところか。

コーチの思惑と、クラブの思惑は違うということだ。

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今日の学び

「距離を泳がすだけでなく、フォームなどの細かな指導と、クラブでのメニュー練習の先に何が期待できるのかが選手と共有できていれば、えせコーチなどつけ入る隙がないのではないか。

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